現在多くのお客様に仮想アプリケーション/仮想デスクトップをご利用いただいており、その環境はオンプレミス (XenApp and XenDesktopやCitrix Virtual Apps and Desktops(以下CVAD))、クラウドサービス(以下 Citrix DaaS)のどちらかで構成されているかと思います。
このうちCitrix Virtual Apps and Desktopsについては、LTSR(長期サービスリリース)の最新版となる2203 LTSRが今年3月にリリースされ、この製品は2027年3月までサポートされます。また、今月15日(2022/8/15)には弊社XenApp and XenDesktop 7.15LTSRがEOL(製品終了)と大きな節目を迎えています。
本ブログではこれらの節目にあたりCitrix Virtual Apps and Desktops製品のアップグレード・移行を実施する際に必要となる考慮事項を以下の流れでまとめています
1.目的の明確化
2.移行先の選択(オンプレかクラウドか)
3.オンプレミス環境でのアップグレード方式との考慮点(2つの方式の違い)
4.追加要件の検討(移行のタイミングで実現したいこと)
- 目的の明確化
まずは、アップグレード・移行の目的を明確にすることが重要です。ほとんどの場合、製品のライフサイクルに合わせてサポータブルな状態を維持することに主眼を置くケースが多いと思います。
- 弊社製品だけでなく、利用されているハードウェアのサポート終了時期が明確になった
- 仮想リソースとして提供しているアプリケーション/サービスやOSのサポート終了時期が近くなった
これに加えてアップグレード・移行のタイミングで同時に実現したいことを整理/要件化することは非常に大事なことですし、絶好の機会となります。
この段階でアップグレード、要件追加などをまとめた目的を明確にしておかないと、将来のIT投資計画がずれてしまう恐れがあります。そのため、計画を明確にし、予算枠の確保/承認を取り付ける、そして会社を動かす目的でお客様社内の関係者みなさまのコンセンサスをとるためにも、このプロセスは非常に重要です。
2.移行先の選択
Citrix製品を引き続きご利用いただく場合、一言「移行先」と言っても大きく2通りあります。
- クラウド構成
コントロールプレーンとしてCitrix DaaSを使用します。下図は構成例としてCitrix CloudのGateway Service/Workspaceを利用しています。
- オンプレミス構成
コントロールプレーンとしてCitrix Virtual Apps and Desktopsを使用します。すべてのコンポーネントを搭載する基盤はお客様にて準備・構築いただく形となります。
ここで上記2つの移行先を選択する際に判断材料となる比較要素を以下の表にご案内いたします。
比較要素 | クラウド構成 | オンプレミス構成 |
SLA | 99.9% (Citrix Cloudコントロールプレーン) | システム構成に依存 |
お客様にて準備・管理いただくコンポーネント | VDA
AD Domain Controller CIFS File Server Cloud Connector |
VDA(※1)
AD Domain Controller CIFS File Server Citrix Gateway StoreFront Delivery Controller Studioコンソール Director License Server SQL Server |
Citrixにて管理するコンポ―ネント | Delivery Controller
Studioコンソール Director License Server SQL Server Workspace Gateway Service |
なし |
システム維持管理 | オンプレミス側の構成要素が減るため維持管理にかかる負荷は下がるケースが多い | 従来のオンプレミス環境の運用を踏襲いただく |
システム更新 | オンプレミス環境に構築したコンポーネントについて考慮が必要(※2)
Citrixコンポーネントがサポート可能状態であればCitrix DaaSの更新に追従可能 |
全てのコンポーネントについて考慮が必要 |
システム移行 | 移行ツール(Automated Configuration for Virtual Apps and Desktops)が利用可能 | 移行方式により異なる(後述) |
※1:Citrix Virtual Apps and Desktops 2203LTSRよりHybrid Rightsをお持ちのお客様はIaaS上にVDAの構築が可能となりました
※2 : Citrix Cloud / Citrix DaaSは常に最新状態を維持します
弊社ではCitrix DaaSへの移行を積極的にご支援している状況で、各種セミナーや弊社blogでもクラウドへの移行について紹介させていただいています。しかし、さまざまな理由でクラウド利用が難しいお客様も多くいらっしゃることも認識しています。
以降の章では移行先をオンプレミス製品(Citrix Virtual Apps and Desktops)とした場合の考慮点について記載します。
ご参考:Citrix DaaSへの移行に関する弊社Blog掲載記事:
A strategy for successful VDI cloud migrations
The truth about moving from traditional VDI to DaaS
Learn to automate your cloud migration in episode 1 of The Click-Down!
3.オンプレミス環境でのアップグレード方式との考慮点
オンプレミス製品(Citrix Virtual Apps and Desktops)でのアップグレードには大きく2つの方式があります。
- インプレースアップグレード
現行システムで稼働しているサーバのCitrixコンポーネントのみ、構成を変えずバージョンアップする
- 新規構築&接続先変更
現行システムとは別環境で新規構築して、端末にインストールしてあるCWAの接続先を変更する
2つのアップグレード方式を選択する際に判断材料となる比較要素を以下に記載します。
アップグレード方式 | インプレースアップグレード | 新規構築&接続先変更 |
メリット | ・構成変更が不要であれば、追加サーバーリソースも不要
・ユーザー視点での切り替え作業は不要 |
・切り替えポイントの設定変更のみで実現できる。そのため切り戻しが容易
・現行環境と並行で稼働させるため、新機能や新環境の動作確認が容易に実施可能 |
デメリット | ・ダウンタイムが長期(土日1週末、大型連休)にわたる。そのため切り戻しに時間がかかる。
・新機能や新環境の動作確認を現行環境に影響なく実施するために考慮が必要 |
・新規構築に必要なサーバーリソースが必要
・構成によりユーザー視点での切り替え作業が必要になるケースがある |
このようにアップグレード方式それぞれにメリット/デメリットがありますので、お客様の状況、リスクヘッジポイント等を考慮いただき、アップグレード方式を選択いただければと思います。
4.追加要件の検討
多くのお客様からこれまで利用・運用してきた仮想デスクトップ環境の使い勝手が昨今の状況にマッチしなくなっており、このアップグレードのタイミングに現行課題の課題改善・業務形態やITをとりまく状況の変化に対応した追加実装を合わせて実施したいというご要望いただいています。
以下に特にご意見として多くお聞きする項目をまとめてみました。
―現行環境では解決できない課題の解消―
- Teams最適化機能等Citrix Virtual Apps and Desktopsの最新バージョンで実装された新機能の実装
- コンピューターリソース不足が原因となるパフォーマンス不足/ログオン時間増大の解消
―業務形態やITをとりまく状況の変化に対応―
- コロナ禍後のユーザーロケーションの多様化に伴うリモートアクセスソリューションの導入、およびご利用中の認証基盤の変更/セキュリティ強化に必要となるAzure Active Directory認証やSAML認証への変更、多要素認証方式の導入
- 利用人数の増減に柔軟対応可能なインフラ基盤の整備
以上弊社Citrix Virtual Apps and Desktops製品のアップグレード・移行について考慮すべきポイントを記載してきました。
本ブログがお客様にて実施される移行検討、要件整理の一助になると幸いです。